前回、『ドラクエ10』の開発が遅れている理由が人手不足にあり、
内製ゆえにスクエニ社内の人事異動が
大きく影響したのではないか、という所まで話をしました。
過敏性腸症候群になるまで追い詰められたりっきー。
"あの"ドラクエシリーズのクオリティ維持が、
いったいどれだけ大変なものなのか、少し想像してみましょう。
―――
例えばシナリオ制作ですね。
分かりやすいように模式図で説明します。
『ドラクエ10』は、勇者が悪に立ち向かう話をメインストーリーに据えていますが、
その裏では幾つものバックストーリーが並行して進行しており、
メインの謎を解く伏線として、台詞や本棚などに反映されています。
その際、シナリオ原案の前ディレクター・藤澤仁さんが、
謎解きが容易には出来ないように、
複雑な謎かけ=暗号を施してメインに落とし込んでいると見られます。
シナリオ構造上ではこれを、エンコード(暗号化)と言います。
逆に、謎解きが大好きなユーザーが脳みそをフルに動員させ、
暗号を外していく事を、デコード(解読)と言います。
『ドラクエ3』で言えば、メインストーリーは勇者の息子の話。
バックストーリーは父・オルテガの話に当たります。
普通なら大筋(プロット)を作ってしまえば、
後はシナリオライターに投げて、それでおしまいです。
『3』でも、なぜオルテガが単独行動を取ったのか、
特に難しい謎かけは施されていません。
もう1人の勇者・サイモンが獄死した事から理解に至るのは平易ですし、
イベント数も、ガイアのつるぎを入手する1つだけで、
制作の手間もさほどかからないはずです。
ですが『10』の場合は、複数のバックストーリーが絡んでますので、
設定の数の分だけ、制作に何倍もの労力がかかります。
具体的に言えば、適切なタイミングでリリースする必要のある、
サブクエストの制作数が増大します。
りっきーの言う「十分な品質での提供」とは、
大型ソロコンテンツ・王家の迷宮の調整もさることながら、
そこでしか語られる事のない先代勇者のバックストーリーを用意し、
専用のムービーまで作成した点にあると思います。
輝石補充はよ!と禁断症状を訴える人が続出するくらい、
遊んでも楽しい良コンテンツに仕上がってますが、
なおかつ、盟友とは何者なのか?という謎かけもしっかり施してあり、
クエストNo.337との繋がりも見える事から、
開発陣がシナリオ制作に妥協を残さなかったのが伝わります。
りっきーがコミットメントを達成できなかったのは、
会社としては損失だったかも知れませんが、
ドラクエブランドを守る決断としては、誠に正しかったと思います。
旧『FF14』のような出来になっていたら、
それこそ金銭的損失では済まなかったでしょうし。
―――
仮に前作までのように外注に出していたら、
いったいどうなっていたでしょうか?
少なくともストーリー面で、高いクオリティは維持出来なかったと思います。
その例として、錬金術のバックストーリーがあります。
過去のドラクエシリーズ制作に携わったレベルファイブ社は、
『ローグギャラクシー』や『白騎士物語』、『二ノ国』などのRPGにおいて、
伝統的に錬金システム(アイテム合成)を導入しています。
『8』と『9』に登場した錬金釜が該当します。
ですがこれ、いかにも取って付けたシステムですよね。
錬金術が生み出される為に必要な歴史、世界観の説明が一切ありません。
ゲームデザインを手がける堀井雄二さんが
スクエニと制作会社の間で橋渡しをしているとは言え、
発注をかける相手はコンピュータ専門のプログラマーであって、
ストーリー制作の専門家ではありません。
致し方ない事ですが、発注書に書かれていない限りは、
プログラム動作に必要の無い部分は必ず損なわれてしまうのです。
『ドラクエ10』では、『4』の錬金術に関わる設定が、
バックストーリーとして再定義されています。
しかも、わざわざ2段構えの謎かけが施され、
容易には解けないようにしてあるのは、
その後のメインストーリーで結び付いた時の感動を大きくする為の
仕掛けであったに違いありません。
こうしたストーリーの厚みは、藤澤さんやりっきーの指揮の直下で、
最後の最後まで微調整されてきたからこそ、
根幹を支える土台として根付いているのだと思います。
スクエニ内製である事が、とても重要な意味を持っている証でもあります。
―――
決算書では、「堅調」というたった2文字で状況が表されます。
開発・運営だより -第14号- (2013/12/2)
ですがその裏では、開発スタッフの皆さん全員で
"死に物ぐるいで必死にあがき続けた"、
壮絶なバックストーリーが隠されているのかも知れませんね。
お金の流れからでは分からない、人の頑張りに思いを馳せるのも、
考察マニアの役割だと思っております。
開発スタッフとユーザー、どちらも良い方向に進むのが、
オンラインRPGの理想的な姿なのでしょう。
内製ゆえにスクエニ社内の人事異動が
大きく影響したのではないか、という所まで話をしました。
過敏性腸症候群になるまで追い詰められたりっきー。
"あの"ドラクエシリーズのクオリティ維持が、
いったいどれだけ大変なものなのか、少し想像してみましょう。
―――
例えばシナリオ制作ですね。
分かりやすいように模式図で説明します。
『ドラクエ10』は、勇者が悪に立ち向かう話をメインストーリーに据えていますが、
その裏では幾つものバックストーリーが並行して進行しており、
メインの謎を解く伏線として、台詞や本棚などに反映されています。
その際、シナリオ原案の前ディレクター・藤澤仁さんが、
謎解きが容易には出来ないように、
複雑な謎かけ=暗号を施してメインに落とし込んでいると見られます。
シナリオ構造上ではこれを、エンコード(暗号化)と言います。
逆に、謎解きが大好きなユーザーが脳みそをフルに動員させ、
暗号を外していく事を、デコード(解読)と言います。
『ドラクエ3』で言えば、メインストーリーは勇者の息子の話。
バックストーリーは父・オルテガの話に当たります。
普通なら大筋(プロット)を作ってしまえば、
後はシナリオライターに投げて、それでおしまいです。
『3』でも、なぜオルテガが単独行動を取ったのか、
特に難しい謎かけは施されていません。
もう1人の勇者・サイモンが獄死した事から理解に至るのは平易ですし、
イベント数も、ガイアのつるぎを入手する1つだけで、
制作の手間もさほどかからないはずです。
ですが『10』の場合は、複数のバックストーリーが絡んでますので、
設定の数の分だけ、制作に何倍もの労力がかかります。
具体的に言えば、適切なタイミングでリリースする必要のある、
サブクエストの制作数が増大します。
りっきーの言う「十分な品質での提供」とは、
大型ソロコンテンツ・王家の迷宮の調整もさることながら、
そこでしか語られる事のない先代勇者のバックストーリーを用意し、
専用のムービーまで作成した点にあると思います。
輝石補充はよ!と禁断症状を訴える人が続出するくらい、
遊んでも楽しい良コンテンツに仕上がってますが、
なおかつ、盟友とは何者なのか?という謎かけもしっかり施してあり、
クエストNo.337との繋がりも見える事から、
開発陣がシナリオ制作に妥協を残さなかったのが伝わります。
りっきーがコミットメントを達成できなかったのは、
会社としては損失だったかも知れませんが、
ドラクエブランドを守る決断としては、誠に正しかったと思います。
旧『FF14』のような出来になっていたら、
それこそ金銭的損失では済まなかったでしょうし。
―――
仮に前作までのように外注に出していたら、
いったいどうなっていたでしょうか?
少なくともストーリー面で、高いクオリティは維持出来なかったと思います。
その例として、錬金術のバックストーリーがあります。
過去のドラクエシリーズ制作に携わったレベルファイブ社は、
『ローグギャラクシー』や『白騎士物語』、『二ノ国』などのRPGにおいて、
伝統的に錬金システム(アイテム合成)を導入しています。
『8』と『9』に登場した錬金釜が該当します。
ですがこれ、いかにも取って付けたシステムですよね。
錬金術が生み出される為に必要な歴史、世界観の説明が一切ありません。
ゲームデザインを手がける堀井雄二さんが
スクエニと制作会社の間で橋渡しをしているとは言え、
発注をかける相手はコンピュータ専門のプログラマーであって、
ストーリー制作の専門家ではありません。
致し方ない事ですが、発注書に書かれていない限りは、
プログラム動作に必要の無い部分は必ず損なわれてしまうのです。
『ドラクエ10』では、『4』の錬金術に関わる設定が、
バックストーリーとして再定義されています。
しかも、わざわざ2段構えの謎かけが施され、
容易には解けないようにしてあるのは、
その後のメインストーリーで結び付いた時の感動を大きくする為の
仕掛けであったに違いありません。
こうしたストーリーの厚みは、藤澤さんやりっきーの指揮の直下で、
最後の最後まで微調整されてきたからこそ、
根幹を支える土台として根付いているのだと思います。
スクエニ内製である事が、とても重要な意味を持っている証でもあります。
―――
決算書では、「堅調」というたった2文字で状況が表されます。
開発・運営だより -第14号- (2013/12/2)
ですがその裏では、開発スタッフの皆さん全員で
"死に物ぐるいで必死にあがき続けた"、
壮絶なバックストーリーが隠されているのかも知れませんね。
お金の流れからでは分からない、人の頑張りに思いを馳せるのも、
考察マニアの役割だと思っております。
開発スタッフとユーザー、どちらも良い方向に進むのが、
オンラインRPGの理想的な姿なのでしょう。