本コラムでは『ゼノブレイドクロス』および、
ドラクエ10 Ver.3』のストーリーネタバレを含みます。



まだクリアされていない方は、回れ右でお願いしますね。




【出張記シリーズ】

 【ゼノクロ】ロザリーの惑星ミラ出張記(1)


長編になりそうな勢いです。




前回のあらすじ~


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 このミラの大地でね(ドヤァ

遥か宇宙のかなたにある惑星ミラへと、
民間宇宙船・白鯨に乗って出張した考古学者・ロザリー。

トレジャーハンター+140%のサポート仲間と共に
ゴキブリを焼くお仕事に就きながら、
地球人の新たな故郷・ニューロサンゼルスで、
異星種族との交流と確執を目の当たりにしていくのでした。


ダウンロード

こんにちは、愛用武器のナイフでラウンドリカバリーしている、
ロザリー(中の人)です。

主人公に全体回復アーツを付けると、
ドールに乗れない場所での戦闘が安定するよ!
イリーナさんの必須クエストで習得するから序盤でも使えちゃう!




ちなみに、カリフォルニアには
行った事ありません。





今さらなマメ知識をお披露目したところで、
いよいよ本題へと入ります。


それでは、続きをどうぞ。

 




―――


前回、『ゼノブレイドクロス』のストーリー背景には
B.B.による"人種差別"が隠されていると、
アメリカのフロンティア開拓の歴史と一緒に解説してきましたが、


このゲーム実際に、種族差別や種族間衝突の描写
ノーマルクエストでばんばん出てきますよね。

アレックス

地球人の差別主義代表・アレックスさん。

天使の街ロス・アンジェルスに住む、Blue Bloodの1人です。


アレックス関連のクエストは何と4つも存在し、
隠し仲間キャラ・ミーアの出現条件にもなっている特別待遇!

 1. 文化交流 … ノポン人、マ・ノン人の殺害阻止
 2. 自由平等 … アレックスの説得
 3. 自由意志 … イライザ暗殺未遂事件
 4. 理想 …   アレックスとの決別


NLAに移り住む事になった異星人を謀殺しようと画策したり、
協調路線を唱える指導者を狙撃したり、
図抜けた屑っぷりで印象に残ってる人も多いでしょう。


アレックス

作中では、「異星人」という表現で直接的な言い回しを避けてますが、
これはもちろん、人種のるつぼと呼称された
実際のアメリカ社会を反映したもの。

NLAに次々と入植してくる異星人は、
さながらカリフォルニアのゴールドラッシュ時代の移民者(49ers)で、
掘っても掘っても出てくる万能鉱石ミラニウムは、
まだ法規制されていなかった頃の金鉱脈と言った所でしょうか。

アメリカンドリームを求めて、多種多様な移民が集まった歴史を、
惑星ミラで再び現出しようとしているのです。



しかしアメリカの歴史の裏では、異民族同士でぶつかり合う主義主張を、
アレックスのように力尽くで押し退け、排除してきました。


ヒスパニック

近年において、アメリカ国内で大きな社会問題になっているのは、
増え続けるメキシコからの不法入国と、
それに伴うヒスパニック系移民に対する人種差別です。

カリフォルニア、テキサス、ニューヨーク、フロリダなど、
ヒスパニック系の人口割合が多い州では、
福祉予算の大半がメキシコからの不法入国者への拡充によって消費される為、
それが元で軋轢が生じ、差別運動が起こる原因となっています。


ヒスパニック系の人達は、母国アメリカに背を向け、
英語が話せない人が今でも多いです。


カリフォルニア州の学校は、英語で進められる授業についていけず、
生徒の50%が中学2年生までに中退するような現状です。

ゆえに社会保障面でのバックアップが必要なんですね。


涙の道

アメリカのフロンティア開拓の歴史を遡っても、
人種差別は繰り返し行われてきました。

有名なのが、1830年にインディアン強制移住法を施行した、
Sharp knife(切れたナイフ)こと、アンドリュー・ジャクソン大統領。
何と黒人奴隷牧場の大規模経営者で、
軍の大佐時代はインディアンに対して大量虐殺を指示し、
大統領就任後もあまりの苛烈な政策に、国内世論を
ジャクソン派(民主党)と反ジャクソン派(共和党)の2つに割ったお方。

独立戦争後、大英帝国に連敗続きだったアメリカを
ニューオーリンズの戦いで大勝に導いた英雄なのですが、
国の指導者が進んで差別を行ってきたのが、
今なお人種間の軋轢に喘ぐアメリカという社会を象徴しています。

フロンティア開拓時代は、希望に満ちたアメリカンドリームなどではなく、
迫害を受けた人達の血と涙で汚れた歴史的汚点なのです。



―――


NLAの安全

ところが、他のノーマルクエストでは、
NLAの安全」で危険な原生生物の子供を生かすか殺すか
プレイヤーに判断を求めたり、敵性生物のみを選択して排除する事を、
BLADE隊員の心がけとして強く諭されますますよね。

惑星ミラの原生生物は、言わばインディアンに当たります。
ジャクソン大統領ほどではないにしろ、
アフガンやイラクで敵に容赦の無い砲火を浴びせたあのアメリカが、
違う星に来たからとは言え、共生の道を進めるとは思えません。


どうも真逆の演出が施されているように思えます。


差別主義のアレックスに対する見方もそう。

単にアレックスを打倒すれば済む問題じゃないんですよね。
マ・ノン人の入店を拒否するアパレルショップ店員のアレサなど、
NLAには異星人の入植を嫌悪する人が大勢居ます。
これが現実であって、アレックスはNLAの現実を口にしているに過ぎません。

まして敵方のバイアス人を移民として受け入れるなど、
NLA暫定自治政府の理想とする主義主張を
民間人に押し付けてるだけなんじゃないのと思った展開もあるくらいです。


モーリス

差別に対する発想が進歩的すぎるというか、
原住民や人種に不自然なくらい理解がありすぎです。




さて、ここからが本題。

ジャクソン大統領とは対称的に、異なる人種に対して
差別や偏見を根絶しようと尽力した大統領が居ますよね。



党大会の最終日に、大統領候補受諾演説の場で、
アメリカ国民を分裂させる問題に議論を尽くすのでなく、
何が結び付けるのかを探し、新しく開拓していこうと訴えた人物が。


フロンティア開拓が始まった北東部でなく、
カリフォルニア・ロサンゼルスで最初の一歩を踏み出した人物が。



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アメリカ第35代大統領、ジョン・F・ケネディです。

既に消滅していたフロンティア開拓の地を、
差別と偏見が残ったままの人々の心の根底にも広げていく、
ニューフロンティア」をスローガンに掲げた、43歳の若きリーダー。


合衆国史上初のカトリック系大統領でもあります。



ケネディがアメリカ最西部にあるロサンゼルスで
フロンティアの概念を再提示したのには、2つの理由があります。

1つは、ヒスパニック系移民が多く在住する西部の有権者から支持を得る為です。
カリフォルニアはカトリックの割合が最も多い州であり、
カトリック系大統領が求心力を発揮するにはまさにうってつけの場所。

もう1つは、共和党候補・ニクソンへの逆転劇を演出する為です。


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党大会の演説の後、ケネディは西→東に向かって支持を広げます。

途中で黒人公民権運動家・キング牧師を味方に付け、
南部票や北部プロテスタント票も獲得し、
ケネディ陣営が思い描いた逆転劇は、現実のものとなります。

東部から始まり、黒人やインディアンを迫害する事で進めてきた
フロンティア開拓の血塗られた歴史を、
ニューフロンティアを掲げた選挙戦では全てを逆回しにし、
オセロの盤面のように、白優勢から黒優勢へとひっくり返したのです。



全てを逆回し―

どうやらこれが『ゼノクロ』考察のポイントになりそうですね。


NLA

惑星ミラに降り立ったアメリカ人が、ロサンゼルスを出発点とし、
原生生物や異星人と手を取り合い共生する姿は、
ケネディ大統領のニューフロンティアスピリッツそのものだと言えます。



ケネディはテキサス州ダラスにて2発の凶弾に斃れ、
45歳の夢半ばで命を落とします。

「I Have a Dream(私には夢がある)」と演説したキング牧師も、
テネシー州メンフィスで白人男性に暗殺されます。


アメリカは自分達の手で、全人類共生の夢を閉ざしてきました。
いまだ拭えぬ差別と偏見、そして暗殺、
人々から失われていく未来を逆回しにする事で、
惑星ミラの地に新しいフロンティアを築こうとしているのではないでしょうか。


―――


近年において、ケネディ大統領は
国内外で失策を重ねたとして、あまり高く評価されていません。

その中の1つが、ヒスパニック系移民に対するバイリンガル教育です。


ケネディが取ったのは、ヒスパニックの子供達を
アメリカ人として英語教育する同化政策です。

しかしこれでは、反ジャクソン派の人権運動家が
インディアンの子供達を寄宿学校に入れたのと全く同じ。
民族ごとの伝統性や多様性が失われ、差別の解消には繋がりません。

カリフォルニアで英語が話せないヒスパニックが多いのは、
60年代の同化政策が失敗した事を意味しています。


「言語」の隔たりは、差別や偏見を助長する根源にして、
相手への相互理解を妨げる決定的要因です。


意志が疎通できない相手に対する畏れが、
異なる価値観への差別を生みます。


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(引用:緑星旗 - Wikipedia

世界では、人種を隔てる言葉の壁を無くそうと、
どの語族語派にも属さない人工言語エスペラント語や、
そこから派生したイド語改造案、近年また新しく起きたファシール運動など、
様々な言語改良が試みられてきました。

しかし、どれもそこそこの成果しか挙げられず、
世界統一の公用語としての認識には程遠い状況です。


ゼノブレイドクロス

ゼノブレイドクロス

ゼノブレイドクロス


ですがこの世界にもし、お互いの意志のみで会話できる
言語を必要としない場所があったなら?


そこはまさしく、ケネディやキング牧師が夢見た
全人類が辿り付くべき、差別や偏見が根絶された終着点かも知れません。



話は考察の冒頭に戻ります。

惑星ミラでは、全ての異星人と言語を越えた意志疎通が交わせます。
では、なぜそういった事が可能なのか?


次回はいよいよ、惑星ミラの秘密へと迫ります。
もうちょっとだけ続くんじゃ!

惑星ミラ出張記(3)へ続く