本コラムでは『ゼノブレイドクロス』および、
ドラクエ10 Ver.3』のストーリーネタバレを含みます。



まだクリアされていない方は、回れ右でお願いしますね。




【出張記シリーズ】

 【ゼノクロ】ロザリーの惑星ミラ出張記(1)
 【ゼノクロ】ロザリーの惑星ミラ出張記(2)


タイトルを【ゼノクロ】に変更しました。
全4回の予定です。




前回のあらすじ~


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 決まったわね、今なら接近戦が有効よ!

遥か宇宙のかなたにある惑星ミラへと、
民間宇宙船・白鯨に乗って出張した考古学者・ロザリー。

異星種族との交流と確執の間に立った事で、
フロンティア開拓から続く、アメリカ社会の人種差別を克服し、
ついに惑星ミラ最大の謎の扉が開きます。


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こんにちは、買ったばかりのドールちゃんを
忘却の渓谷の谷底に落っことした、ロザリー(中の人)です。


だっていける思うやん…。




さて今回から、『ドラクエ10』のVer.3のお話と絡んできます。

どうして更新の間が空いたのかと言うと、
惑星ミラの正体を過不足なくお伝えする為に、
不思議の魔塔の考察を先に済ませる必要があったからなんですよ。




それでは、続きをどうぞ。






―――


全てを逆回し―


前回までに分かったのは、どうやら『ゼノクロ』のストーリーは
フロンティア開拓から始まる19世紀の血塗られた歴史を、
20世紀の多民族共生の思想から逆回しに進めているのではないかという事です。

イングランド系移民による東部13州の独立宣言以降、
原住民が暮らす土地を暴力によって奪い取ってきたアメリカが、
ヒスパニック系移民が集まる西部ロサンゼルスから開拓を再スタートし、
今度は友好と調和をもって領土を広げる。

暗殺されたケネディ大統領のニューフロンティアの夢を、
惑星ミラで再現しようとしているかのようですね。




ノアの箱舟

ストーリーを第12章「魂の在処」まで進めると、
地球種汎移民計画の真の姿がエルマさんから語られます。

旧約聖書のノアの大洪水、つまり地球滅亡の危機から
地上の人々を安全な場所に運び出すのがこの計画の目的だったそうで。


あれ?でもおかしな点がありますよね。

ノアの大洪水は神の意志による決定事項であって、
異星人同士の争いに巻き込まれる偶発の事故では無かったはずです。

さては神の存在から意図的に視線を逸らそうとしてるな?
真相を伏せる為に敢えてミスリードを誘う、
推理小説などで用いられる叙述テクニックです。

その手には乗りませんよ!



ライフ

こちらは「セントラルライフ」の中枢となる、
地球人の意識と遺伝子情報を保存したスーパーコンピュータ。


ライフ

ライフ

人工生体ブルー・ブラッド(B.B.)の意識も、
ここから転送されているんだそうです。








しかし…




エンディングで衝撃の事実が。








ミラ

「ライフ」のデータベースは、
墜落時に損傷し、情報を失っていた!





データベースがぶっ壊れていたのなら、
地球人の意識を転送しているスーパーコンピュータは、
いったいどこからのデータを参照しているのか?

プレイヤーに大きな疑問が投げかけられた後、
This story is never ending...」の文字。


なるほど、先ほどのミスリードはここにかかってる訳ですか。




ゼノブレイドクロス

ゼノブレイドクロス

ゼノブレイドクロス


順番に思い出してみましょう。


惑星ミラの謎は、第5章の段階で既に提示されていました。

この星では異星人同士の言葉を越えたコミュニケーションが可能です。
エルマさんは「不思議に思う」と、ざっくりとしか述べてませんが、
ノアの方舟と同様、神話の観点から謎が解けます。

ヒスパニック系移民の英語教育が進まず、
差別や偏見を助長する原因となっているアメリカの社会問題の中で、
かつて人種や言語の隔てが無く、
全ての人々の意志疎通が自由に出来ていた時代があった。

こんなお話が、旧約聖書に示されてましたよね?




バベルの塔

そう、バベルの塔です。


不思議の魔塔の考察で出てきた、例のアレです。

【考察】39.不思議の魔塔シリーズ(1)~混沌から世界は生まれた




ゼノクロのストーリーに引用されてる神話は、
ノアの箱舟だけではない。


天地創造から続く創世記のエピソードを、丸ごと引用してるんです。




しかし、これだけでは矛盾点があります。


ノアの方舟


創世記のエピソードは、以下の順番で展開されます。


 天地創造

 アダムとイヴ

 カインとアベル

 ノアの方舟

 バベルの塔



時系列で言うと、ノア契約の後に起きたバベルの塔事件で、
人々の言葉が通じなくされます。

『ゼノクロ』のストーリーは真逆です。
ノアの方舟、つまり民間移民船・白鯨に乗って惑星ミラに降り立って以降から、
あらゆる異星人との言葉が通じるようになってます。


ミラ


ここで、先ほどのミスリードが生きてきますね。

ノアの方舟計画を「異星人同士の争い」と説明したり、
バベルの搭を想起させる意思伝達を「不思議に思う」だけで済ませたり、
神が人類史に介在した話をモデルにしてるはずなのに、
その存在だけが一切語られないんです。


まるで抜け落ちたかのように。


アメリカ人の8割はキリスト教信者ですから、
惑星ミラで起きている一連の奇跡は、
普通なら確実に「神の思し召しである」と信じる所ですよ。
ベタベタな展開のアメリカ映画なら、
「Oh my God!」とつぶやいて十字を切り始めてもおかしくない。

ノアの方舟計画、バベルの塔現象、そしてライフで起きた奇跡。
最初から神の介在があったと考える方が自然です。

すなわち、地球滅亡から始まる2年間の旅は、
神話の通り、神の意志による決定事項であった、と。




―――


サマール星団


こちらは、『ゼノクロ』の舞台となった、
サマール星団の全体を表した模式図です。

星の位置や大きさは適当なので、あくまでイメージとして捉えて下さい。


惑星ミラについて判明している事実は、
ドクターBやマ・ノン人のクエストなども含めて以下の通り。


 ・ 惑星ミラ周辺の宙域は直径800エグゼデ(光速で3日)。
 ・ ミラ宙域の端には「事象の地平線」がある。
 ・ 端まで行くと元の場所に戻される為、ミラ宙域からは脱出不可能。
 ・ 無限に湧き出る資源・ミラニウムがざくざく掘れる。
 ・ この星のあらゆる異星人は、何者かに導かれて集結した。



もしも最初から神の介在があったとしたら、
バベルの塔現象と同様に、ノアの方舟計画にも矛盾が生じます。
神と預言者ノアと交わした契約は、
全ての人達が世界中に散り広がりなさいという内容です。
惑星ミラ一か所に集う内容ではありません。

これもまた真逆。



白鯨


では、全てが逆回しになってるとしたらどうでしょうか?

NLAに住む人達は、未来に進んでいるように見えて、
実は神話の時代へと遡っているとしたら?





地球種汎移民計画は、人類が宇宙へ散り広がるのではなく、
神が暮らす楽園(エデン)への帰還を意味している。

種族の隔てなく言葉が通じるようになったのは、
バベルの塔事件によって言語を搔き乱され世界中に離散した人々が、
神のもとに再び集った事を意味している。

全ての辻褄が合います。




天使の血族であるB.B.が、神によって導かれ、
かつて人類が暮らしていたエデンへの帰還を果たした。



これが私が考える、惑星ミラにおける全ての謎の答えです。




ライフ

ライフ

セントラルライフは、ドラクエ10で言う所の「創生の霊核」、
本ブログでマクロコスモスと呼ぶ存在に当たります。

地球で開発された頃は単なるデータベースに過ぎなかったものが、
人間とデータとの間に惑星ミラの意志が介在する事で、
魂として存続しえたのではないかと。


人類がエデンの園で暮らしていた頃は、
老いも病も、死への苦しみも無く、永遠が約束されていました。

データベースを失ったB.B.の意識が今なお転送され続けているのは、
これもまた神の介在が原因であったと考えられます。
B.B.は惑星ミラによって生かされているのです。



ライプニッツ

ここで振り返っておきたいのが、
前作『ゼノブレイド』のキーワードとしても挙げられる、
天才数学者ライプニッツの「モナド論」です。


モナドとは、「単子」と訳される運動原理の源です。
神がこの世界や人間に施したプログラムだと思って下さい。


例えば、エルマさん。


エルマ


「エルマ」を構成するモナド

 ・ クリュー星系出身の異星人
 ・ テスタメント所属
 ・ フルメタルジャガー
 ・ 地球人を滅亡から救う為に地球に降り立つ
 ・ 常に冷静沈着でリーダーシップを発揮



こういった単一プログラムが無数に組み合わさって、
「エルマ」という個を構成しています。

エルマさんは己が信念と正義感に基づいて、
地球種汎移民計画を持ち掛ける行動を取ったのでしょうが、
実はこれが惑星ミラの意志によってプログラムされた予定調和だとしたら、
地球人の意識をB.B.の肉体に移し替え、
白鯨=ノアの方舟に乗って宇宙に出るようアドバイスをしたのも、
全ては神によって定められた未来だった事になります。


ミラ

という事は、惑星ミラに介在する神様は、
地球人に楽園へと帰還するプログラムを予め施しており、
そのプログラムを実行に移すべく、
犯罪結社グロウスを動かして地球をぶっこわしたのでしょうか。


惑星ミラの意志が何の為に地球を破壊したのか、
今後の追加シナリオで明らかになっていくのでしょうが、
現時点で分かるのは、前作のラストに神無き世界の創造を望んだ、
シュルク達の世界とは全く繋がっていないという事です。


―――


という訳で『ゼノクロ』本編の考察を
3回に分けて見てきましたが…。

1日違いで発売された『ドラクエ10』Ver.3と、
メインストーリーが丸かぶりしてる点にお気付きになったでしょうか?




例えばVer.3.0での、竜将アンテロのこの台詞。


アンテロ

(参照:【考察】36.人間と竜族が仲違いした理由【ネタバレ注意】

下等種族」「選ばれし民」などなど、
差別的な意味のある際どい表現が出てきました。

深く考えたらシラナミさんの問題発言とは比べ物にならないほど、
根の深い人間と竜族の違いに直面します。


竜族

竜族は、最初の発表ではアンテロさんのように、
どこか怖いイメージ画でした。

目は強膜部分まで黄色く、肌はウロコがはっきりと露出し、
爬虫類っぽい非人間性を思わせます。


竜族 竜族

ところが竜族の中にも、目は虹彩部分だけが黄色く、
肌もウロコが目立たない人達が居ましたよね?


アンテロ

アンテロさんは前頭部と眉の部分にもウロコがあります。
頭髪も全て角質化し、非人間性が強く出ています。

竜族の差別意識の根底は、こうした肌の違いにもあると見られます。


アレックス

でもって地球人の差別主義代表・アレックス。
彼は高貴の血族(B.B.)である事を誇りとしていました。

肌や血の色に優劣はありませんが、
出自や生まれを気にする人にとっては、
自らの優位性を示すのに好都合なのでしょう。


単なる台詞だけで相手に意志を伝えるのではなく、
肌や血液の色など、台詞以外の表現に意味が込められている事で、
アンテロとアレックス、2人の差別意識が
言語を絶するくらい強烈なものであるのが伝わってきます。




奈落の門

それから、神のもとへ帰還するお話について。

エデンの園への帰還は、エテーネ村の本棚にあった、
『神のみことのり』という本の内容と共通します。


 『神のみことのり』

 我らの創りし子らは 未知なるものを求め
 未踏なる地へ 向かわんと欲する
 先へと進む心をもって 世に現れた。

 そのように生まれついた 彼らなれば
 いかに禁じようと やがて 奈落の門へと至り
 その先を 目指すことだろう……。

 ならば 我は 試練を課そう。
 心弱き者が 奈落の門の先に行くことの無きよう
 強き心を持つ者のみを 選ぶ試練を。



これらの一致は、決して偶然ではないと考えます。

日本のRPGは今から20年ほど前から、
シナリオライターの人達がこういった複雑な表現を用いるようになり、
ドラクエやゼノシリーズだけに限らず、
それぞれの世界観や背景が厚みを増していったからです。


次回はおまけの回。

『ゼノクロ』から分かるJRPG特有のシナリオ構造と、
なぜ日本だけがシナリオに特化したのか、
JRPGの歴史を振り返りながら、確認していきましょう。

惑星ミラ出張記(4)へ続く