アストルティア考古学の40回目は、「フェザーチップ」の考察です。

長編シリーズの2回目になります。

なお、ストーリーのネタバレを含んでますので、
その点をご同意頂ける方だけ、続きをご覧下さい。

【アストルティア考古学シリーズ】
 ・ 短評Ver.1 冥王編 神話篇
 ・ 短評Ver.2 蒼天のソウラ 夢現篇

 ・ 配信クエ カミハルムイ メギストリス
 カンダタ1 2 ダーマ

 ・ 光と魔瘴 1 2 3  ・ 赤い月 1 2
  ・ レンダーシア大陸 1 2
 ・ 錬金術 1
 2 3  ・ 創生の渦 1 2  ・ 運命の特異点 1 2
 ・ 光の勇者 1
 2  ・ 叡智の冠 1 2  ・ 竜族と創造神 1 2 3
 ・ 進化の秘法 1
 2  ・ 時渡りの術 1 2  ・ テンスの花 1 2
 ・ 神の器 1 2  ・世界樹の花 1 2  ・神話の塔 1 2  New!
  

―――


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ロザリー
 鳥のレリーフ…!

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 なんかすごーく見覚えがありますね。



フェザーチップ

不思議の魔塔の公開記事より。

これ見て、疑問に思いませんでした?
中の人の不思議は、まずここから始まりました。



ロザリー なんで「フェザー」のチップなの?


_2ufqsyraCYX05o1402383909_1402383914 ……さぁ…?


ロザリー ビーストコートとか、ドラゴンスケイルとか、
 他のチップじゃダメだったの?

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 えらい細かいとこにこだわりますね。




実は、前回の考察ではあえて触れなかった、
バベルの元々の意味である「神の門(Bab-el)」を探っていくと、
非常に気になる点があるんですよね。


カ・ディンギル

 『ワイルドアームズ』にも出てきたやつ


神の門という名称は、バビロニア王国の成立前から付けられていて、
これより以前のシュメール都市国家時代では、
カ・ディンギル(Ka.dingir)」と呼ばれた都市の名前でした。

 ・ シュメール語  Ka.dingir.ra (ka=門、dingir=神、ra=の)
 ・ アッカド語   Bab-ili (ili=神、elと同義)
 ・ ギリシャ語   Bab-el

バベルはその訳語であり、カ・ディンギルを制圧したバビロニアが、
シュメール語の使用を廃してアッカド語を国語とし、
都市名を改めた事に由来します。

よって、神の門に当てられている「神」という言葉は、
後に出来たバビロニア王国の神(ili)=マルドゥークを指すのではなく、
先のカ・ディンギルの地で祀られていた、
シュメール王国の神(dingir)を指すのです。




シュメール神話の神と言えば…








(こっそり専門の人に聞いた)








アン

 天 空 神 な ん で す



ロザリー 有翼の神…だと…!?


_2ufqsyraCYX05o1402383909_1402383914 背中に羽根が生えてます!





アン
 アヌ (メソポタミア神話) - Wikipedia


天空神アンは、エンキ、エンリルと並ぶ、シュメール三大神の1人です。
混沌の海の女神ナンムの子であり、
シュメール王国では最高神とされていました。


アン

 天空神 - Wikipedia


ロザリー まだ多神教の時代なので、
 最高神と言えどもコロコロ交代するんだけどね。

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 アンんんんーー!!



ちなみにアンの後に最高神になった空の神エンリルさんも、
エンキの息子・マルドゥークに取って代わられたそうで。

骨肉を争う、世はまさに天空戦国時代…!




イシュタル門

イシュタル - Wikipedia イシュタル門 - Wikipedia


有翼神の系図は、アン→イナンナと受け継がれます。

女神イナンナ(イシュタルは、曾神のアンと同じく有翼の神であり、
戦上手であった事から、シュメール文明の滅亡後も
バビロニアの首都バビロンの勝利の女神として祀られます。


バビロン市街で門と言えば、一般的には、
聖搭ジッグラト(バベルの塔のモデル)への玄関口である、
市街地北部のイシュタル門を指します。

ジッグラト

バビロニア王国では、シュメール文明の影響を受け、
天空世界が信仰の対象となっており、
死者の魂は天へ還り、天上の星々となると信じられていました。
ジッグラトは天体を占う為の観測台であり、
バビロニアにとっては占星術が、死者を弔う宗教でもあったのです。
(黄道帯十二星座の発見にも繋がります。)

その為、巨大な観測台を建設し、できるだけ神に近付く事が、
バビロニアの為政者の権威誇示にもなりました。


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 なるほど、これがバベルの塔のモデルになっている訳ですね。

ロザリー
 おもっきし天空の搭にも当たるよねこれ。



ジッグラトの北側に構える正門は、言わば天国への玄関口に当たります。
そこに戦神イシュタルを門番に据えた事は、
あの世とこの世の境界を隔てる意味合いがあったのでしょう。

つまり、Bab-el(神の門)という言葉は元々、
天空世界への出入口を意味するのです。



奈落の門

となれば、不思議の魔塔が作られた理由が気になってきますよね。

魔塔の本棚には、建築主はゾーネスという錬金術師で、
究極の錬金術である神の知識を得る為に建てたと書かれてありました。


 私の考える 錬金術の究極の目的……
 それは この世界の真理へと至り
 全てを見通す 神の知識を手に入れることである。

 私の すべての財産と この先の命数を賭して
 必ずや この目的をかなえてみせる!



しかし、ナドラガンドがかつての7番目の大陸として、
アストルティアの上空に浮いていたという神話が事実なら、
天空世界まで連なる高塔を建てても、
そこには浮遊大陸しか存在しないはずです。

なぜなら、神の知識とは女神ルティアナが所有する創生の霊核の事であり、
霊核の力は奈落の門の向こう側に封印されているからです


コナン

 あれれ~? おかしいぞ~?


ロザリー
 奈落の門はナドラガンドを封印したものじゃなかったの?

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 指をさすな、指を。



錬金術師ゾーネスが創世の女神に近付こうとしていた意図は明確です。
ではなぜ、創生の霊核が眠る奈落の門ではなく、
浮遊大陸が広がる天空世界を目指したのでしょうか?

そもそもなぜ、創生の霊核と浮遊大陸が、
現在では同じ場所に封印されているのでしょうか?


それはナドラガンドがアストルティアから切り離された時、
ルティアナと創生の霊核も一緒に
奈落の門の先に封印されたからに違いありません。

すなわち、ルティアナと創生の霊核は、
アストルティアの世界の真上にあったのではないか

という推測が成り立ちます。



ロザリー
 ゾーネスにとってあの搭は、バベル(Bab-el)の意味と同じ…。

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 神の門を開こうとしていた…!?



―――


真理の扉

至高の錬金術師の称号を授かるゾーネスさん。
名前以外は分からないので、(仮)の姿としておきましょう。


ゾーネスが欲した創生の霊核が何であるかは、
既に考察を終えています。


 【考察】26.進化の秘法に辿り着いた者
 【考察】27.奈落の門の向こう側


創世の霊核とは、宇宙に存在するあらゆる物質を
元素(アルケー)の合成によって生み出す秘術であると考えられます。




人体元素濃度


こちらは人の生体に含まれる元素濃度の一覧表。
生体維持に必須元素は、判明している分で28種類です。

例えば、人体の主成分であるタンパク質を生成する時は、
酸素・炭素・水素・窒素の4つに、イオウをわずかに混ぜて作ります。
骨であれば、酸素・カルシウム・リンの3つで組成し、
マグネシウムやタンパク質などを混ぜて結び付きを強くします。


しかし、これはあくまで理屈の上での話。
人体からは少なくとも35種類の元素が発見されており、
これらの中には働きがよく分かってないものも存在してるんですよね。

また、どの元素を、どの分量で、どのように組み合わせれば良いか、
生成する割合は非常に緻密かつ複雑であり、
おおよそ人の知識ではトレース出来ないものなのです。


 『究極の錬金術』という本だ。

 道を究めた錬金術師は その奥義によって
 生命に きわめて近い存在……
 疑似生命を創りだすことすら 可能とする。

 さりとてそれも 自ら思考し 生み増える
 まことの生命の奇跡には とうてい 及ばない。

 究極の錬金術とは すなわち
 生命を創りだす 神のみわざに 他ならないのだ。



錬金術師ゾーネスが究極とした「全てを見通す神の知識」は、
女神ルティアナが生命創造に用いた設計図、DNAを表していると思います。
DNAは言うなれば人体錬金のレシピです。

ゾーネスの目的は、DNAから生命を構成する元素の配分を読み取り、
ルティアナの秘術をトレースする事にあったのでしょう。



ロザリー
 設計図さえあれば、あとは錬金術と要領は同じね。

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 必要な素材を錬金釜に入れてチンするだけ?



仮にそうだとしたら、このゾーネスさん、
やたらとこだわってる部分に疑問点が生まれるんですよね。


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こちらはドルワーム王国在住の建築家、ドン・パパチョさん。

アストルティア世界遺産に登録されている、
ヴェリナード城、ザマ烽火台、コロシアムなどを手掛けた、
ドルワームの名門・ドン家の現在の当主であり、
不思議の魔塔を建設したドン・ビロンチョの子孫だと思われます。

ビロンチョさんはガタラに住んでたそうなので、
水晶宮がゴブル砂漠の砂中から発掘された後に引っ越したのかな?


さて、話は冒頭に戻ります。

ビロンチョは魔塔の入口に鳥のレリーフをあしらえてるんです。


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ロザリー
 これ、確実に見覚えあるよね?

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 神話篇で王者の座の扉にあったのとそっくりです…!



アストルティア神話

魔塔の方には逆さ羽根が付いてたり、
足の位置がわずかに高かったりする違いは所々にあるんですが、
いずれにせよ、同じ「神話」に纏わる建造物に、
似たような鳥のレリーフが施されている点は見逃せません。


神話とは、文字通り神様のお話。
なぜアストルティアの神様が、鳥の姿にかたどられているのでしょうか?

そこにはやはり、ドン・ビロンチョに建設を依頼した、
ゾーネスの思惑が働いていたはずです。


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錬金術師ゾーネスは、かなり鳥の姿にご執心だったようで、
作業台の上にガチャコッコの足が置かれていたり、
絵を何枚も描いてたりしてます。


 ほこりをかぶった 古いノートだ。

 なかには ガチャコッコのデッサンが
 何枚も 描かれている。
 描いた人は かなりのガチャコッコ好きのようだ。



もちろんこれは、ガチャコッコが好きだったからではなく、
鳥の姿を研究していたと考えるのが妥当です。



チャコロット

ロザリー
 不思議の魔塔でガチャコッコと言えば…?

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 案内人のチャコロットですね。



チャコロット

 台詞を送る「ピピピ」の音がたまーに低くなる…


空から突然落ちてきたチャコロットは、
高出力のロケットブースターを装備していた点を踏まえても、
天空世界まで自力で到達できたと見られます。

おそらくこいつは、神話の搭を建てて神に近付こうとした、
ゾーネスの意志を具現化したもの。
錬金術によってガチャコッコに魂を移し替え、
現在まで生き永らえたゾーネス自身の姿に違いありません。


錬金術師ゾーネス


ゾーネスは目的達成の為だけに富と時間を使い、
物事の本質を見極めたとされる人物でした。
そのゾーネスが鳥の姿をここまで徹底してトレースしている理由はただ1つ。

天空世界の女神ルティアナが、
背中に翼を持つ鳥のような姿だったからでしょう。



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錬金術と天空世界の更なる関係については、
こちらの本に示されています。


 『闇の創世記』という本がある。

 この世界は 女神ルティアナにより創られ
 そこに暮らす者たちは 女神の子たる
 7柱の種族神により 生みだされた。

 一方で アストルティアとは 次元をへだてた
 いずこかに 魔界と呼ばれる世界があり
 そこには 魔族と呼ばれる者たちが暮らすという。

 ならば 魔界を創り 魔族を生みだしたもの。
 いうなれば 闇の神とでもいうべき者が
 存在するという仮説は…………

 この先は ページが破れていて
 読むことができない!



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 闇の創造神、ですか…。

ロザリー
 いつも肝心なとこが破れてたりするな!



だから吹きっ晒しの場所に本を保存するなとあれほど。
知恵の社以来、これで2度目。


錬金術の背景となった神話をたどっていくと、
最終的に原始ミトラ教に行き着きます。

ゾロアスター教

バビロニア王国がペルシア帝国によって滅ぼされた後、
バビロンのマルドゥーク神殿は破壊され、
代わりにペルシアで信仰されていたゾロアスター教が広められます。

預言者ゾロアスターは、一神教時代の先駆けとなった人物。
原始ミトラ教では、時間を司る創造神ズルワーン、
火を司る太陽神ミトラなど、あっちこっちに神様が居る多神教であった為、
信仰する先がころころ変わって指導に困っていました。
そこでゾロアスターは、ズルワーンの子である、
光明神アフラ・マズダを唯一神とする宗教改革を起こします。


ゾロアスター教は非常に分かりやすい教義が特徴で、
暗黒神アンラ・マンユとの最終戦争で光の勢力が勝利するから、
皆でアフラ・マズダを応援してね、というもの。

キリスト教のヨハネ黙示録にそっくりなんですが、
バビロンで囚われていたユダヤ人が、一神教の教義をパク(ry


マケドニア

一方、ズルワーン神学を支持してゾロアスター教から分裂したミトラ教は、
太陽神の信仰からバビロン占星術を取り入れます。

その後、ペルシアを征服したマケドニアのアレクサンダー大王が、
ギリシャ文化とペルシア文化の融合政策(ヘレニズム融合)を取った事から、
ミトラ教とミトラ神学の善悪二元論の考え方は、
ギリシャ→ローマへと広がっていきます。

ギリシャには優れた学者が数多く居ました。
ゾロアスター教が土着に留まり、ミトラ教だけが地中海を越えたのは、
ミトラ神学が進歩的な天体観測法に結び付いており、
ギリシャで主流だったストア学派がそこに目を付けたからです。

バビロン占星術は、エジプト・アレクサンドリアで、
ホロスコープ研究として発展し、錬金術の基礎となります。


不思議の魔塔

前置きがすっかり長くなりましたが…。

女神ルティアナに対抗する、悪の創造神の存在は、
バベルの塔→天空信仰→錬金術を線で結ぶ手がかりになり、
キリスト教成立以前のバビロン時代の神話が容易に連想されます。
錬金術のベースとなった善悪二元論は、
アストルティアの錬金術にもしっかり当てはまってますね。

と同時に、女神ルティアナがおそらく、
シュメール文明の神(dingir)と同様に有翼の神である事も、
バビロン占星術の観点から想像できます。


ドラクエで鳥の神様と言えば、例のアレなんですが…。
これはまた別の機会に触れるとしましょう。


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となると、なぜ報酬が「フェザー」だったのかも腑に落ちます。

フェザーチップは有翼神の姿を模した部品であり、
それを報酬目当てにやってくる冒険者共に集めさせれば、
己の手を労さずとも世界の真理に近付ける、


といった寸法なのでしょう。
おのれチャコロット、やはり油断なりません。


ロザリー
 こいつ…! やっぱり腹に一物もってやがる!

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 だから声色まで変えて、愛嬌を振りまいてるんですね…。


悪の創造神とかどうでもいいから、こいつを成敗したい。


結論: フェザーチップは有翼神の一部




この続きは、不思議の魔塔の本棚が充実したら書く事にしましょう。

これからどんな事実が明るみになっていくのか、
今から楽しみにしておきたいです。(神話の搭(3)へ続く。)