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 アローラ!






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どうも、アローラ地方への出張から帰ってきた、
ロザリー(アローラのすがた)です。




さて今回は、『ゼノブレイドクロス』に続く出張記シリーズ第2弾、
ポケットモンスター サン&ムーン』の考察です。

MMOとは違って、既に完結したストーリーですので、
いつもより突っ込んで解説していきますよ。


それでは、続きをご覧下さい。

最後までお付き合いのほど、宜しくお願いします。
 




―――


ダウンロード (1)

今から3年前、中の人は
『ブラック・ホワイト』『X・Y』の考察記事を書きました。


今さら振り返るのも話の腰が折るので、
箇条書きで要約すると、


ブラック/ホワイト

 ・ 白黒はっきり分けたい(命題関数)…N
 ・ 白黒混ざったグレーな存在(カオス理論)…主人公

X/Y

 ・ 適者生存説(遺伝子進化論)…フラダリ
 ・ 共生進化説(ガイア理論)…主人公


これまでのポケモンのストーリーには、
バタフライエフェクトで知られるカオス理論や、
適者生存説が誤りであった事を実証した細胞内共生説など、
シリーズ共通のテーマである「共生」に沿った定義が組み込まれており、
中の人はその点を取り上げて考察しました。

ディレクターの増田順一さんは、『ルビー・サファイア』の頃から
謎かけを世界観に溶け込ませるのが上手く、
対立する二極論を主人公サイドと歴代ボスが問答し合い、
どちらが正しいか決着させていました。

その反面、人物描写は台詞のみで主義主張を説明するに留まり、
多くは論理が飛躍し過ぎている為、
世界観ほど練り込まれてはいなかった印象です。


N

『BW』のボスキャラ・Nさんがその典型でして、
はっきり言って行動原理が意味不明な人でした。


N

N


Nはポケモンをモンスターボールから解放する、
すなわちホワイト(真)とブラック(偽)を分けると主張しつつ、

ボクの全身から溢れるトモダチへのラブ!見せてあげるよ!

と言って、モンスターボールを懐から取り出す有様。

お前もモンスターボール使っとるやんけ!
とひゃっぺんは突っ込みたくなるわ。


計算上では白黒分かれていたNの目指す世界も、
ポケモンとくっついて離れない主人公が不確定要素(ゆらぎ)となった事で、
線形予測の軌道から外れた事実を認め、
異なる考えを受け入れる=白黒混ざり合うようになるのですが、、、

それは作中の台詞で説明しているだけ。

Nの人物描写からはさっぱり伝わらず、
アニメではキャラの改変が行われたほどです。

※ 「人種のるつぼ」と呼ばれたニューヨークがモデルのイッシュ地方で、
  白が黒を虐待する直接的な表現を無しに、
  Nの台詞だけで共感してもらうには無理があったと思います。





ですが、




ヒガナ

『ORAS』の追加シナリオ・エピソードデルタから明らかに、
謎かけが人物描写に落とし込まれている。





それもそのはずでした。


増田さんがディレクター職を退かれ、
新ディレクターの大森滋さんに交代したからでした。

レックウザがメガシンカするデルタ編のシナリオをまるまる1本、
新しいシナリオライターの方に一任しています。


(知らずに遊んでた。)




ヒガナ

デルタ編のヒガナは、おそらくシリーズ初の、
行動原理をいちいち台詞で説明しないボスキャラです。

すぐに世界を破壊・再構築したがる歴代ボスと異なり、
死別した大切な人の代わりに役割を果たす、
という身の丈にあった主義主張が匂わされており、
謎解きの対象が世界全体→ヒガナの内面へと向かっているのが特徴です。

ヒガナは空に向かって故人の名前をつぶやくだけ。

彼女の貫こうとした信念が、ほんのわずかな人物描写で、
プレイヤーに伝わるよう試みられているのです。

(伝わったかどうかは別にして。)




この人の作るゲームは面白い!


大好きなポケモンシリーズがより面白くなった!




そう感じた中の人は、大森さんがいつか
本編シリーズの方を手掛ける事にとても期待をしていました。


そしてついに、その時がやってきたのです。




サンムーン

 2016年11月18日

 ポケットモンスター サン&ムーン発売!




やったあああああああ!!!




―――


前置きが長くなりましたが、


大森ディレクターが『サン・ムーン』にどんなテーマを用意したのか、
世界観より人物描写に注目しながら、
まずは公式サイトのインタビューを確認していきましょう。




大森滋

(引用:ディレクター・大森滋氏が語る、2つのソフトに込めた想いとは?


大森滋


ディレクターコメントより抜粋。


 地球は太陽を中心に回転し、月は地球を中心に回転しており、
 地球から見た際には、それぞれ同じような軌道で空を回っていますが、
 見方を変えることで、回転の仕方が異なることがわかります。

 地球と太陽と月、それぞれが引き合い、
 影響し合いながら生命を育んでいるのです。
 


地球と太陽と月、それぞれが影響し合う。

なるほど、さっそくキーワードが出てきましたね。



太陽」と「」は分かります。
今作の伝説枠、ソルガレオとルナアーラの事ですね。


では、どこにも出ていない「地球」とは何の事か?


おそらく大森さんは「回転の仕方が異なる」という部分を、
人物描写のどこかに落とし込んでいるはずです。

















答えが明らかになるのは、ストーリーの終盤、
娘・リーリエと母・ルザミーネが、
ウルトラスペースで対峙するシーンです。




ルザミーネ

> ルザミーネ
 わたくしは!
 わたくしの 好きなもの だけが
 あふれる 世界で 生きるの!

 たとえ 自分の 子供でも!

 どれだけ わたくしを 慕っていても!

 珍しいと される ポケモン だとしても!

 わたくしが 愛を 注げる
 美しい もので なければ
 ジャマでしか ないのです!

 そう! わたくしの 世界には
 わたくしの 望む ものだけで
 あふれていれば それで いいのです!




これに対して、

リーリエからの回答はこう。


リーリエ

リーリエの後ろに居るのは、
中の人の主人公キャラ(アスターくん)。


> リーリエ
 ウンザリ です!

 子供は……
 親の モノでは ありません!

 ポケモンも トレーナーが
 好きにしていい モノでは ありません

 わたしも 生きています!

 コスモッグも 生きています!

 モノでは ないのです





お分かりでしょうか?




ルザミーネとリーリエは、
どちらも同じ対象物を見ているのです。


ただし、その見方が異なる。




天動説

ルザミーネは、常に自分中心です。


言うなれば、ルザミーネの視点を「地球」として、
彼女の周りを彼女の愛するモノ(星々)が回っている、
唯我独尊の天動説を唱えています。

これが彼女の望む世界です。




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リーリエは、周囲との共生を唱えています。


リーリエからの視点を「地球」として見た時、
彼女は支えてくれた周囲の人々の影響を受けて、
母親から独立し自ら回り始めます。

つまり地動説です。


地球の自転は、他の惑星との衝突が原因で起こったもの。

大森ディレクターが最初に言った、
「見方を変えれば回転の仕方が変わる」とは、
ルザミーネとリーリエ、それぞれの視点から見た、
他者との交わりを表しているのです。





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(引用:日食・月食のふしぎ

リーリエが望む他者との共生関係は、
地球に働く他の星からの相互作用で表されます。



太陽は、地球をちょうど紐を付けて振り回すように、
太陽の重力と回す力が釣り合った状態でぐるぐる公転させています。
しかし地球の重力がなければ遠心力は生まれません。
地球は太陽と持ちつ持たれつの関係です。

そして月は、地球の重力に振り回されているのと同時に、
月の重力によって地球上に潮汐摩擦を発生させ、
地球の自転速度を少しずつ遅くしている事で知られています。
地球と月の関係もこれまたイーブンです。


対立する二極論を母娘で問答し合う構図から
共生のテーマを伝えている点は歴代ボスと同様なのですが、

『サン・ムーン』のストーリーの特徴は、地球と太陽と月の相互作用を、
伝説ポケモンを使ってマクロ的に説明するのではなく、
リーリエの人物描写によってミクロ視点から伝えている点です。





ほしぐもちゃん

コスモッグは、ほしぐもちゃんと呼ばれています。

「ほしぐも」を漢字で書くと、星雲(せいうん)ですよね。


コスモウム

星雲は凝縮して星間分子雲(原始星)
つまり、げんしせいポケモン・コスモウムとなり、
太陽や月はそこから生まれます。

(参照:宇宙情報センター / SPACE INFORMATION CENTER :太陽の誕生


明らかに星間分子雲の事を指して「ほしぐも」と呼称してますので、
地球と太陽と月はもともと1つの星雲から生まれた、
というトップダウン形式で、スケールの大きな世界観を
ばぁーんと描き出す事も出来た訳です。

『ダイヤモンド・パール』などが、
そういうシナリオ構造になってたと思います。


リーリエ

> リーリエ
 アローラの いろんな 島を 巡り
 多くの 出会いが ありました

 (中略)

 ハラさんが おっしゃってたでしょ

 ポケモンや 人に 出会うことで
 人生が おもしろく なるって!



しかし『サン・ムーン』では、星間分子雲が成長して
太陽と月になる過程を、ボトムアップ形式で進行しています。

そうする事で、リーリエとほしぐもちゃんの冒険譚に主軸が移り、
島の人達との交流がミクロ視点から描かれ、
2人に対する深い感情移入を呼び起こしてるんですな。




改めて言いましょう。


これは面白い!




ちなみに、『サン・ムーン』のシナリオは
『BW』と同じく、松宮稔展さんが担当されています。

見方を変えるだけで、話の面白さまでこうも変わるもんです。




ウルトラホール

また、成長したほしぐもちゃんにはまだ謎が残されていて、
これまでのシリーズのように世界観から考察する余地があります。

ウルトラホールの謎がまだ残っています。




これは中の人もゼンリョクで行こう。

という事で、




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シンオウ地方にダブルヘッダー出張してきました!



『サン・ムーン』には、シンオウ地方との相関がいくつも見られます。

空間研究所で研究されていた対象や、
エーテル財団が生み出したタイプ・ヌルのベースとなったのは、
言うまでもなくシンオウ地方のポケモンですよね。


次のリメイク作が『ダイヤモンド・パール』になるでしょうから、
ウルトラホールの謎もここで解明されるはずです。

そう思い立ったが吉日。
アローラ地方の旅を終えた足で、
そのままシンオウ地方へと渡る事にしました。



リーリエ

後編は、ウルトラビーストの正体に迫ります。

ウルトラホールの向こう側に広がる異世界とは、
いったいどんな場所なのか。


アローラ出張記(後編)にレッツロー!