アストルティア考古学の57回目は、「汎神論」の考察です。

全3回を予定しているシリーズの後編です。

なお、ストーリーのネタバレを含んでますので、
その点をご同意頂ける方だけ、続きをご覧下さい。


【アストルティア考古学シリーズ】
 ・ 短評Ver.1 冥王編 神話篇
 ・ 短評Ver.2 蒼天のソウラ 夢現篇

 ・ 配信クエ カミハルムイ メギストリス
 カンダタ1 2 ダーマ
 ・ 設定資料集 アストルティア創世記

 ・ 光と魔瘴 1 2 3  ・ 赤い月 1 2
  ・ レンダーシア大陸 1 2
 ・ 錬金術 1
 2 3  ・ 創生の渦 1 2  ・ 運命の特異点 1 2
 ・ 光の勇者 1
 2  ・ 叡智の冠 1 2  ・ 竜族と創造神 1 2 3
 ・ 進化の秘法 1
 2  ・ 時渡りの術 1 2  ・ テンスの花 1 2
 ・ 神の器 1 2  ・世界樹の花 1 2  ・神話の塔 1 2
 ・ ナドラガ教団 1 2  ・聖鳥と太陽 1 2 3  ・創生の霊核 1 2
 ・ 奈落と常世 1 2 ・ 邪悪なる意志 1 2
 ・ 神獣 1 2
 ・ 創世の女神 1 2 3 New!
 








ロザリー

 いよいよ最後の考察だよ!

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 4年間の集大成ですね。









アストルティア考古学シリーズは
今回をもって最終回となります。

最後までお付き合いのほど宜しくお願い致します。




Ver.3において語られた神話戦争の結末。

これまでキーワードで提示されてきた謎かけの答えは、
エステラが神に語り掛けるクライマックスシーンに集約されています。


それでは、続きをどうぞ。



―――



エステラ

ロザリー

 ええお話やった…。

_2ufqsyraCYX05o1402383909_1402383914 エステラさんの境遇を考えると、
 並々ならぬ決意の表れだったんですね。



 エステラ
 オルストフさま……私たちは あなたに
 すがることに 慣れてしまい……
 自らの歩みを 止めていたのですね。

 ……私は 今 自分の足で歩きだします。

 勇気を……! 未来の切り開き方を……

 ロザリーさんが 教えてくれたから!




早速ですが、エステラさんのこの台詞。

察しの良い方はすぐにお気付きだったでしょう。


神の器をめぐる争奪戦から始まり、
神話戦争の後始末で終わったVer.3のストーリーは、
エステラの心情の中に端的に表されているんです。




神の器

(参照:【考察】35.神代からの因果

以前の考察でも触れた通り、
神と人間との関係は、陶器師と器に例えられます。

原初の人類・アダム=土くれ(adama)という意味であり、
神は自らこしらえた粘土細工に息を吹き込み、命を与えています。


「息」とは、つまりは魂の事です。

言語によってプウネマ、ルーアハなど様々な呼び方がされていますが、
今風に言えばスピリトゥス(spiritus)、
もっと今風に言えばスピリット(spirit)となります。
日本語では「霊性」と訳されます。


神の器

土くれから生み出された全ての人間は、
大魔王オルゴ・デミーラの台詞を借りれば「デク人形」であり、
主人の命令に忠実に従う土人形=ゴーレムです。

『ドラクエ7』では「人形」と表されていた人間の存在が、
『ドラクエ10』では預言書と同じ「器」という表現に落とし込まれていて、
フウラちゃんの神降ろしシーンをはじめ、
アストルティアの神々が依代として利用するなど、
器とは何であるか、とても分かりやすく伝えていました。


ロザリー

 今回ついに、6柱の神全員が器の肉体を借りて降臨したね。

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 アストルティア史上初の出来事ではないでしょうか!



6柱神の集結シーンでもやはり、
エステラさんの台詞と同じ内容が語られています。

同じ内容の説明が2度も行われるという事は、
それが3.5のストーリーにおいて重要なテーマであるという証拠。
アストルティアの神々が、器を介して語った言葉を、
詳細に振り返ってみましょう。




以下、エンディング部分に該当する為、
台詞の一部を抜粋してお届けします。





ジャギ

 ナドラガ
 アァァアァァアァ……憎い……憎い……。

 竜の民はァ 皆 我の所有物ゥゥ……。
 だというのにィ なにゆえ 裏切るかァァッ……。

 


と、のたまうナドラガ神に対し、
依代を借りた弟妹たる6柱神はこう答えています。



グランゼニス

 グランゼニス
 まだ わからぬか 兄よ……。



ワギ

 ワギ
 神の時代など とうに 終わっておるぞ。



エルドナ

 エルドナ
 子らは 自らの両足で 歩んでいます。



ガズバラン

 ガズバラン
 アンタが気づくのを 俺たちは待っていたんだが。



マリーヌ

 マリーヌ
 兄さんって どれだけ 愚かなのかしら?



ピナヘト

 ピナヘト
 兄貴……時代遅れの神話に 幕を下ろす時だよ!



 (神々一同)
 世界の一部となり 我らとともに
 子らの行く末を見守ろう。




ロザリー

 兄への態度が悪い神が何人か居るな。

_2ufqsyraCYX05o1402383909_1402383914 ロザリーもお兄さんの事を
 俊夫は服のセンス悪いだの言ってるじゃないですか。




神の器


こちらのダウンロード画像みたいなのが、
陶器師と器の関係を表した相関図になります。


アストルティアを管理する6柱の神々は、
女神から分け与えられた創生の力で神の器を創作し、
そこに神の意志とも言うべきを吹き込みます。

器は種族神ごとに1つずつですが、
グランゼニスだけ2つあると仮定されます。

息を吹き込まれた器はそれぞれ生命を宿し、
神の意志に従って活動し始めます。



エステラ

エステラ

竜族の神・ナドラガも器を創作しており、
それがマティル村の流行り病で生き残ったエステラでした。

と同時に、3.5後期ストーリーの終盤で、
ナドラガ教団の総主教オルストフが、
実は「竜神の意志」という真の名を持つ、
ナドラガ神の分身だった事が判明するのですが、

エステラさんの別れの台詞は、
育ての父であるオルストフとの決別を表すのと同時に、
器である自分の中に生命を吹き込んだ、
父なる神の意志からの離脱を意味するのです。




オルストフ

幼い頃に全てを失ったエステラにとって、
ナドラガ神への信仰は、生きる事そのものでした。


 『灼熱の大地』という本だ。

 思えば あの日から 一度も泣いてません。
 この地は 何もかもが 熱く焼けていて
 涙すら かわいてしまったのでしょう。

 ただ 今の私には やるべきことがある……。
 それだけで 生きる望みがわくのです。
 すべては オルストフさまへの恩返しのために。



妖精図書館にある本に吐露された
エステラの心中からも読み取れるように、
彼女の生は、オルストフとナドラガ教団の為にありました。

総主教オルストフが神の一部だった事は、
すなわちエステラは神の意志に従い、
それに対する信仰のみを糧として生きてきたという意味になります。


ジャギ

ナドラガ神は、「竜の民はみな我が所有物である」としていますので、
分身であるオルストフを通じて教団の思想の下に統一し、
全ての竜族を神の意志に束ねる事を望んでいます。

要するに陶器師が自分で創作した
器の所有権を主張するのは、当然だと言っている訳です。


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 何でちょいちょいジャギで説明するねん。

ロザリー

 弟に嫉妬した兄でぴったりの役じゃない。



エステラ

エステラの決意は、これに反するものです。

一度は諦めた命を再び吹き込んでくれた神にすがる事を止揚し、
自ら考え、自ら歩きだす、自由意志の表れであります。


彼女は眼前に対峙するナドラガ神を、
最後まで「オルストフさま」と呼んでいました。

ナドラガ

エステラにとっての神とは、
アストルティアを滅ぼそうとした邪神ではなく、
竜の民を「愛しているに決まっている」とはっきり述べた、
オルストフの言葉であったに違いありません。


邪神を倒した後、

 この世界の神は……滅びました。
 だけど 私たちは 生きていきます。


と、生きる決意を再び口にしたエステラさん。

彼女の名前は、「星(Estella)」を意味します。
エステラさんが神から授かった生命が、
ずっと先まで輝かしいものである事を願うばかりです。



―――



スピノザ

このように、近世合理主義における
神の内在について纏めた哲学を汎神論と言います。

汎神論は、17世紀のオランダの哲学者、
バールーフ・デ・スピノザによって提唱され、
ヨーロッパ中で大論争を起こした事で知られています。


一言で説明すると、

 神が器を創作してその中に息を吹き込んだのなら、
 息を吹き込まれた器も神と同じなんじゃね?


と、合理主義者らしい尤もな主張です。


神すなわち万物である=「神即自然」の概念は、
人間と宗教の在り方を一変しました。

この考え方は論争の際にドイツに持ち込まれ、
ゲーテによって体系化、ヘーゲルによって主観的要素が排除され、
教会の政治的影響力を弱める政教分離の規定に至ります。



主人公

さて、3.5のストーリーではもうひとつ、
主人公が2度目の生き返りストになるシーンがありましたね。



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 世界樹の花ちゃうんかい。

ロザリー

 ロザリーさん的には花を使うのが正解だった…!




グランゼニス

主人公は、グランゼニスが息を吹き込んだ
双子の弟の家系から続く、もう1つの神の器だと考えられます。

しかし、1度目の生まれ変わりで、
主人公の肉体には他の5種族神の力も宿っています。

これはつまり、グランゼニスが創った器の中に、
6つの息が吹き込まれているという事です。
もともとこの肉体の持ち主だった各種族の人物の魂も、
冥府の縛鎖を解く為に肉体を離れた為、
この器には、霊験あらたかな6柱神の力のみが内在しているのです。


生き返りの術

主人公がアンルシアら6つの神の器の
残り寿命を受け取り、2度目の生き返りが出来たのは、
主人公の肉体には最初から6種族神の息吹が注ぎ込まれていて、
他の神の器が内在している神パワーを分けてもらい、
不足した主人公に補充したから、と解釈する事が出来ます。

うーむ、こっちの方が確かに収まりが良い。



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で、6柱神の器の力を借りてグランゼニスの神威の大剣を振るい、
邪神ナドラガの体を真っ二つにしたんですが、

この主人公、六角形の中心に居ましたよね。


しかもこの時に使用した神威の大剣の
本当の名前、覚えてます?


 勇…の神 …ラ…ゼ…ス
 かの…が持… 神器セ…シアは 光…放つ



ロザリー

 神器セレシア…!?

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 まさかの名前が出てきました!




女神セレシア

セレシアは、『ドラクエ9』の世界の女神の名前で、
人間の神・グランゼニスの娘です。


その名を冠した大剣を扱えるとは…。

つまり…ゴクリ。




あまりに自然な描写で、
周りの登場人物達も完全にスルーしてましたが、


 最後の決戦の時……
 私は 五神の全霊を宿した剣で
 ナドラガの身を 切り裂いた。

 そして ナドラガンドを
 断罪の虚空へ送り 封じ込めたのだ。



本来であれば、邪神ナドラガにとどめを刺すのは、
グランゼニスの担当だったはずなので、
神の器で割り振るなら、勇者アンルシアが行うべき事です。

なのに、6神の力を内在した主人公が行い、
しかもこの時、主人公だけ種族神に憑依されてませんでしたから、
まるで神様の1人であるかのような扱いを受けているのです。


主人公2

おそらくこれが、生まれ変わりの意味を知る、
エテーネの民に託された使命の一端、という事なのでしょう。




シンイ

Ver.3メインストーリークリア後に、
エテーネ村を再興するイベントが発生しますが、
これもVer.4の前フリに決まっています。

主人公、兄弟姉妹、シンイの3人の運命が、
この先どうなるのかは、神のみぞ知るといった所でしょうか。



―――



ロザリー

全57回、4年に渡って続けてきたアストルティア考古学シリーズも、
今回をもって最終回となります。

これほど長く継続できたのは、
応援してくださった読者の皆様のおかげです。


本記事を最後に、ドラクエ10を引退します。

アストルティアでの私の旅はここで終わりますが、
今後はロトゼタシアに舞台を移し、
以下のブログでドラクエ11の考察を行っていく予定です。


記号論研究所

 記号論研究所 マンガ・アニメ・ゲーム考察


ドラクエ11発売の7月29日までしばらく間が空きますが、
覚えていて下さったら、また足を運んで下さいませ。




それでは皆様、4年間本当に有難うございました。

皆様の冒険の旅に幸多からん事をお祈りし、
アストルティア考古学の〆と致します。



 2017年 7月12日

 ロザリーのアストルティア考古学 中の人より